絵が出来上がる。写真がまだ発達しいない時代には画家がモデルを雇って1枚の絵をじっくり描いていたので、ある程度の財力がなければ人物は描けない時代が長く続きました。 現代は携帯で撮った写真がひと昔まえのデジカメ以上の解像度を誇る時代。 人物を描くのに写真を活用しない手はありません。
写真起こしの絵を否定する人が居てますが、これはボクは違うと思ってます。 果たして実物モデルが目の前にいたら描けるのでしょうか?写真だとうまく描けないのでしょうか? 画力があればモデルはいなくても描けますし、画力がなければモデルが居ても描けないでしょう。
写真は画家が画力を発揮する際の「参考資料」として有用です。人体の構造を理解しているのであれば実物を見ずとも写真からだいたい想像がつきます。構造を理解していなければ、たとえ実物モデルを見てもわかりません。わからなければ結果として、輪郭線を頼りに形を追うだけの絵になることでしょう。ボクが美術解剖学を広める活動をしているのは、その画力の基礎となる知識を広めたいからです。
さて、神戸の画家のatari saori さんは解剖学的なアプローチをする画家で何度となく神戸でモデルをさせてもらってます。写真を多数撮り、その中から決めたポーズを写真で起こす—->描いてみる—->実物で確認—->修正—->実物で再確認 このアプローチで真に迫りますが、目の前にある人の形について、Q&Aを繰り返して画家とモデルの共同作業で1枚の絵を完成させてゆきます。
製作途中の絵を覗き込むモデル海斗。この日は右肩、左の上腕、などが修正のテーマに上がりました。
それで、画家とモデルの共同作業の成果として1枚の絵が出来上がりました。モデルとしてやりがいありますよ。画家もモデルもいつかは寿命が来てこの世を去る。でも絵は残る。画家とモデルが一緒になって切り取った瞬間がずっと残ると思うと感慨は深いです。